旧世界旅行記
はぐるまやの作品には一部架空の概念・架空の王国・架空の人物など
ファンタジーなストーリーが関わる作品があります
作品に関わるショートストーリーやフレーバーテキストも
作品と併せてお楽しみください
旧世界旅行記 本編
旧世界旅行記1
「これは二つ先の山の遺跡から発掘された古代の遺物さ。歯車ってことは、これはきっと動かして使うものなんだろうな。でも今はこの遺物の使い方を知っている人がだ~れもいないから、あたしがこうして仕事の片手間に装飾品に加工しているのさ。きれいな魔石が埋め込まれてるから、物好きな観光客が買っていくんだ。あんたも一つどうだい?」
―――――プレシオサの町にて、とある石工職人の娘の話
旧世界旅行記 2
「旅のお方、その蝶の装飾品、石工職人の娘から買ったのかい?似合ってるじゃないか。どれ、私がまじない石もつけてあげよう。そうだな…旅の夜は火おこしが必ず必要だから、火を込めたまじない石にしようか。どうしても火おこしのすべがないとき、この石を外して岩で割りなさい。たちまち火が立ち上り、一晩は燃えてあなたを守るだろう」
―――――プレシオサの町にて、外れに住む魔女の話
旧世界旅行記 3
「ほほう、それで、火のまじない石を間違って割っちまって、ぼろぼろになっちまった装飾から使えるとことをとって別の装飾にできないかって相談に来たんだな。俺は鍛冶屋で、細工師じゃあねえんだが…。ほれ、この金の枠に形の残っている歯車を組み合わせて、小さくなっちまった魔石をここにつけて……残ったまじない石を下げればどうだ。随分小さくなっちまったが、旅の友には十分だろ?」
―――――鉱山の町にて、街の鍛冶屋の男の話
旧世界旅行記 4
「これかい?これは古代の遺物を加工して創られた時間遡行の機械さ。はめ込んだ魔石の魔力を使って、これに触れているものの時間をさかのぼらせるんだってよ。理論上は何度も使うことができるって話なんだが、あいにくこれを作った魔術師はその技術を伝えずに死んじまって、こいつは今は動かねえ。あんた、旅人なんだろ?これ、もっていってくれよ。あんたなら、もしかしたらこれを動かせる人に出会うかもしれねえからな。もしそれができたなら、またここに訪ねて来てくれよな!」
――――――鉱山の町にて、街の雑貨屋の男の話
旧世界旅行記 5
「ほう、時間遡行の遺物…そんなものがあったのか。私はしがない森の魔女だから、それを使う術は分からないが、近しいものなら知っているよ。これは水生みの遺物といって、魔石をはめて樽や桶に入れて使うんだ。魔力が動力になって機械が動き、空気の成分から少しずつ水を産むから、砂漠の国でとても重宝されている。もしかしたら、砂漠の国へ行けば、なにか知ることが出来るかもしれないな。」
――――――鉱山の町より先、森に住む魔女の話
旧世界旅行記 6
「砂漠の国に向かうのなら、水生みの機械をひとつやろう。これは意匠がよく似ているから、万一旅の中で壊れることがあっても、またここに来さえすれば私が直せる。お代は結構さ。代わりに、時間遡行の遺物の使い方を学んだらまたここに来てくれないか?新たな知見を広めたいからな。頼んだぞ、旅の人」
――――――鉱山の町より先、森に住む魔女の話②
旧世界旅行記 7
「ほう、お前さんも砂漠の国へ行くのか。俺たちもちょうど砂漠の国に行くんだぜ。魔術の心得のある人間が同行してくれたら心強いが…どうだい、寝食は俺らに任せて、一緒にいかねえか?…そうと決まっちゃ善は急げ。この”時知らせの遺物”を預けるぜ。こいつは日に2度、日が昇った時と日が沈むときに不思議な音が鳴る遺物で、4つある荷馬車の荷車番がそれぞれ持っている。明け方にこの遺物から鳴る音でおれたちは出発し、夕方に鳴る音で止まるんだ。お前さんには最後尾の荷馬車でしんがりと時計番をしてもらいたい。頼めるか?」
――――――砂漠の端、同行した商隊の話①
旧世界旅行記 8
「あんたがしんがりをしてくれる魔術師だって?え?魔術師見習い?まあ、心得があるならなんだっていいさ。あたしはこのキャラバンの大将の娘で、二番目の荷馬車の時計係。これがあたしの”時知らせの遺物”ね。二番目の荷馬車には香辛料が積まれてて、あたしはキャラバンにとって一番大事な荷馬車を任されてるのよ。キャラバンとしてはあたしがうーんと先輩だから、わかんないことがあったら何でも聞きなよ。これから砂漠の国までよろしくね!」
――――――砂漠の端、同行した商隊の話②
旧世界旅行記 9
「おまえ…魔術師…?おれ、三番目の荷馬車の…時計持ち…これ…三番隊の…時計…落としてたら…拾って…。三番目の荷馬車…食料品運ぶ…麺麭の粉とか…乾物で長持ちするやつ…砂漠では高値で売れる…。おれ…料理番だから…狩りして料理もする…。毒取った蛇とか、たまに魔獣も…毒は…4番目の荷馬車に渡して…薬作ってもらう…これも高値で売れる…おまえも…使うか?使うなら…分ける…。砂漠では…よろしく…」
――――――砂漠の端、同行した商隊の話③
旧世界旅行記 10
「各所の時計持ちへの自己紹介はすんだかい?あたしは普段四番目の荷馬車で薬師をやりながら時計持ちを務めていた婆さ。今回は隊長があんたを雇うってんであたしは薬師の仕事に専念させてもらえることになったんだ。腕の立つ薬師だって各所で有名になっちまって、時計を持ってケツを警備しながらじゃあ調薬が間に合ってなかったんだ。ただでさえあんたが同行してくれて助かるってのに、魔術師だってんだからさらに大助かりさ。道中頼りにしてるよ。」
――――――砂漠の端、同行した商隊の話④
旧世界旅行記 11
「出発して早々は何も起こらんだろうから、交易品のこととか、いろいろ話を聞かせてやろう。お前さんは魔術師と言ったね?ならば杖の類は馴染みが深かろう。うちじゃ杖は人気の品だが、これから向かう砂漠の国では、【精霊竜の杖】が有名でねえ…あたしらも買いつけて帰ってくるが、1本でそいつの10本分にも、20本文にもなるのがこの【ドライアドの杖】さ。なんでだかわかるかい?…ああ、その通り。砂漠の国はどでかい砂漠の真ん中の、たまたま芽吹きのあったオアシスにつくられた国だから、緑が少なくて精霊ドライアドの加護がないと植物が育ちにくいのさ。だが、ドライアドは深き森に住まい生まれる精霊…こうして魔石に宿らせ休眠させながら移動させてやらなければ、砂漠の国に渡るまでに枯れて死んでしまう。魔石はそれぞれ魔力で満たされ、装飾の部分には、精霊が心地よく杖にとどまっていられるよう工夫がされているのさ。砂漠の国に渡ってからも安心はできないよ。むやみに使えば精霊は簡単に枯れてしまうからね。だから時々マナをたっぷり含んで湧く泉に杖を持って行き、精霊を放して遊ばせてやるのがいいんだ。精霊に魔力が満ちれば、精霊たちが枯れるのを遅らせ、長い間加護を得ることができるからね。」
ーーーーー砂漠の国への旅路にて、商隊の薬師の話
